<山と人生>思いやり

<山と人生>
第3回 思いやり

すこし前の話だが

南アルプスの山小屋で

天候不順のため宿泊客の無断キャンセルが相次いでいるとのニュースを見た

鳳凰小屋では、連休中のある日の宿泊客40名のうち、18名もの無断キャンセルがあったということだ

先に着いた客は、遅れてくるであろう18名のために食事を遅らせて待っていたという

天候不順でヘリコプターは飛べない

同じ山域の北岳山荘では、すでに縦走客以外への弁当の提供を停止しているぐらい、物資に不足している

だから山小屋の関係者は標高差1,000m、時間にして5時間の距離を宿泊客のために食材を担ぎ上げて待っていたのだという

場所は高山である。予約した者が現れなければ、遭難したか、何らかの不調が生じて遅れているのではないかと心配になる

予約した者が現れなければ、自らの危険を顧みずに助けに行くこともある

南アルプスだけではない。全国の山小屋で同じようなことが起こっているに違いない

たとえ自動車で行ける場所であっても、自分たちのために食事を作って待っているであろう人への配慮は欠いてはならない

それが、登山口から5時間もの山頂なのだ

「そんな人は山の登る資格がない」と断罪するのはたやすい

5時間もの道のりをあなたのために食材を担ぎ上げ、険しい道を登ってきたあなたに安全で心身ともに休まる場所を提供して待っているであろう人への配慮ができない人は、家族や友人や職場の人たちにどんな配慮ができるのだろうか

山では時に、極限状態に近くなることがあるゆえに、その人の「本性」が見えやすくなる場所だと思う

山で人への配慮ができない人は、下界でもできないだろう

そのような人がどのような人生を送るのかは、容易に想像がつく

「最低限のマナー」といえなくもないが、山でなくても、常に人に対しての思いやりを持ちたい

山でのストーブのありがたみは経験した者にしかわからない

山でそうであるように、誰も一人の力だけで生きている訳ではないのだから

山にいこうよ

椿 健

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